top of page

​月鳴参加句抄

投句一覧 令和五年下半期

福井 青木かよ子

1、養老先生右往左往や啓蟄日

2、杉落葉踏んで祠の遠拝み

3、符号の積み石もいつか仏に夏の雲

あわら市 小林史於

4、葉柳をくぐり足湯の人の輪へ

5、紫陽花やよい意味にとるあの言葉

6、誰からの湿布の匂い梅雨の入

福井市 笠松信子

7、大夕焼真っ赤に染めて今日一日

8、手のひらに揺れる風ありシャボン玉

9、篠に住む社に続く蛍舞う

福井市 白﨑寿美子

10、豌豆のふくらみ食めばギュッと鳴く

11、救急車カラスが襲う雀の子

12、指尺で大まかに植えキューリ苗

鯖江市 佐藤節子

13、夏来る訳あり野菜の大袋

14、風吹けば風の花なる花ポピー

15、沙羅の花落ちて地上の華となり

福井市 笠松信子

16、夕焼けて今日の一と日に手を合わせ

17、蛍舞う背戸の小川は社へと

18、夫の一周忌一つ二つと落つ沙羅の花

福井市 村田淑子

19、リス籠渺茫と蛇の影

20、カウンターの雑多を退けて蝮酒

21、風琴の風吸いつめぬ蜃気楼

あわら市 小林史於

22、捩花や非常階段灯るころ

23、ひたひたとベンチを沈め姫女苑

24、たましいが五つほしい子ソーダ水

福井市 村田淑子

25、前に負(おぶ)ふ嬰のしなひや蓮の花

26、藻の花や神社を抜けて歩く街

27、青苔や畳に上げん庭の石

沖縄県糸満市 平良幸子

28、薔薇園や先へ先へと香をたどり

29、薔薇園の色香を浴びて小半時

30、薔薇の名を読むに倦みたり浅間山

沖縄県糸満市 平良幸子

31、姥捨の棚田の動く青田波

32、山蟻や姥捨山へ餌を背負ひ

33、オーナー札なづる棚田の青田風

福井市 髙石まゆみ

34、城下夏雅楽の音色響かせよ

35、青蔦に侵略されし彦根城

36、淡海の波音静か夕端居

勝山市 石田秋桜

37、炎天下放置自転車痛そうな

38、風にふと微かな弱さ敗戦忌

39、陶磁器の白さの緩む熱帯夜

あわら市 小林史於

40、夕蝉ややがて追いつく雨の音

41、児をまねて巻貝を聴く青簾

42、声張って足場の幕の油蝉

鯖江市 佐藤節子

43、軽トラに鍬と子供と大夕焼

44、捩り花返事せぬ子の薄き髭

45、喧嘩して仲直りして夏休み

福井 青木かよ子

46、花の名を辿る水辺の蓮の風

47、流れ藻や太古の影を追う跣足

48、眉月や胡弓のうねり灯のゆらぎ

沖縄県糸満市 平良幸子

49、台風禍花綵列島総なめに

50、五日経て灯のともる町台風禍

51、軍装にあらず着物や盆支度

福井市 白﨑寿美子

52、平和村くまの親子が出没す

53、秋灯のひとつは私師の句集

54、亡父らし稲穂の波を泳ぎ来る

あわら市 小林史於

55、玩具箱の底発条が鳴る残暑

56、赤とんぼ群舞は季を送る風

57、無花果を干す紫の影を干す

福井市 村田淑子

58、一脚ずつ立てるイーゼル草の花

59、夕立の洗ひ上げたり九回戦

60、アイドルの産後の復帰こがね虫

福井市 笠松信子

61、言葉なくほほえむ夫と立つ花野

62、枝豆や話しがはずむ莢の山

63、秋の雨やっとうるおう畑仕事

勝山市 石田秋桜

64、幾つかの貌のひとつに秋の欝

65、凌霄花影持たぬまま登り行く

66、秋旱立ち漕ぎで行く部活動

福井 青木かよ子

67、柱状節理浜昼顔を遠く置く

68、三日月や城址に万の灯を点し

69、悩ますのは帰省子の髭面会日

あわら市 小林史於

70、校庭に無人のテント秋の雨

71、白木槿夕べ明るき狐雨

72、朝顔のしぼみそこねし午後の雨

福井市 髙石まゆみ

73、吊るされし塩引鮭の顔尖る

74、千年を醸す塩引鮭晒す

75、花野なら笑って許せる君の嘘

福井市 白﨑寿美子

76、薄紅のもの言いたげに芙蓉咲く

77、正直に生きてるつもり蕎麦の花

78、秋耕の一直線にトラクター

福井市 松島可奈

79、水染みて憂いを癒す七変化

80、秋旱十月十日の水通し

81、不揃いのだんごを供え居待月

福井市 山本正雄

82、秋の田の母の手拭忘れ得ず

83、城復元紅葉を添えて念じ待つ

84、寿町に生きる仏の柘榴の実

大阪府 光安翠

85、厄年や遥か彼方へふるさとの囃子

86、一片の刻を掴んで図書の虫

87、先見据え何はなくとも心は錦

沖縄県糸満市 平良幸子

88、秋寂ぶる空き家のうしろまた空き家

89、わき見して走る園児や運動会

90、秋深し娶らぬ子との暮しかな

沖縄県糸満市 平良幸子

91、夫逝きて装ふことのへり素秋

92、風邪ひきて体の軸のふわふわす

93、読書の秋賢治とみすゞつれかへる

福井市 塩谷美津子

94、出過ぎたと諫めるばらの紅きこと

95、からっぽの引き出し数多更衣

96、男振り江戸紫の花菖蒲

あわら市 小林史於

97、秋日和庭に畑に人の出て

98、日溜りの石にゆらゆら秋の蝶

99、株元に木洩日届く萩の秋

100より、100の段 省略

福井 青木かよ子

00、初紅葉焼きたてパンの香をちぎる

01、待ちきれずジオラマ汽笛秋茜

02、自然石の橋は肩巾初時雨

鯖江市 佐藤節子

03、歩の弛むかさりかさりと落葉道

04、松手入脚立に確と命綱

05、過疎の里熟柿に鴉たむろして

坂井市 中田良一

06、渓谷へ小春の朝を見に着たり

07、逆境を味方につけて芒原

08、号泣のあたりに白き息が散る

福井市 松島可奈

09、駅の中あんみつを待つ列伸びて

10、秋晴れやマックでサラダ令和の子

11、ビル群に浮いた神秘今日の月

福井市 白﨑寿美子

12、人生って風に揺られて蕎麦の花

13、ラーメンのお湯注ぐだけ文化の日

14、ゆったりと生きる術知る冬の虫

丹生郡 藤坪憲雄

15、ブランチの濃い目のコーヒー紅葉晴れ

16、一病を生き甲斐として鰯雲

17、農を継ぐ混沌の世の稲光

福井市 髙石まゆみ

18、句作りは言葉の積木小鳥来る

19、後に知る千畝の勇気茨の実

20、岩壁は数多の歎き秋深む

あわら市 小林史於

21、瓦屋根埋めて落葉に日のぬくし

22、冬薔薇水の匂いのペティナイフ

23、山眠る吐息が虹となる夢に

福井市 笠松信子

24、気の急くや苺の苗にごめんと植え

25、霧立つや一瞬に浮く竹生島

26、びわ湖バレー迎えてくれた雪だるま

福井市 松島可奈

27、長き夜の異国語飛び交う街酒場

28、愚痴ばかり知らぬ間に柿色づいて

29、旅慣れた鞄の底の冬帽子

沖縄県糸満市 平良幸子

30、キシクシュとうぐひす張りや紅葉寺

31、釈迦仏の動乱の傷そぞろ寒

32、色変へぬ松やそこここ庭師ゐて

沖縄県糸満市 平良幸子

33、苔寺や千両万両そろひ立つ

34、霜月の白く咲きたる四季桜

35、日に透くる足助の五色紅葉かな

沖縄県糸満市 平良幸子

36、花頭窓の式部に問ふや紅葉寺

37、片紅葉弥勒菩薩の半跏像

38、焼き討ちをのがれし堂宇もみぢ晴

鯖江市 佐藤節子

39、冬日和駄菓子も並ぶ古本屋

40、三日目はさすが崩れるおでんかな

41、若きラガー顔に血と汗滾らせて

福井市 髙石まゆみ

42、宿木やアンクルトムの塒かな

43、もつれあうモッツアレラチーズ冬隣

44、ダスキンのモップに付きし残り秋

福井市 白﨑寿美子

45、農道を派手なスニーカー冬晴るる

46、大関に土べっとりと冬ざるる

47、今時は正座が苦手ラ・フランス

大阪府 光安翠

48、秋桜に君を探して手ブレする

49、秋風やおむすびほおばる紅葉の手

50、祖母譲り味覚伝える台所

丹生郡 藤坪憲雄

51、砥ぎ上げし出刃の反り身や冬の入り

52、お婆等の程良き間合日向ぼこ

53、今年米白さに惑うウクライナ

あわら市 小林史於

54、街騒を吸取る冬の日射かな

55、ジャンパーに新刊二冊庇う雨

56、寒雷や夜半のガス火に混じる赤

坂井市 中田良一

57、たわむれに駄菓子屋へ寄る冬日和

58、銭湯の跡地のあわれ冬木の芽

59、蹴り込んで松ぼっくりもどんど焼

bottom of page